わらぼうき
レビニ、レビニ。おはようさん。テルミンは上達したかい?
レビニは右耳をわずかに痙攣させて、前のめりになる。
やめなよ、レビニ。また地に足が着いてないじゃないか。レビニは呟く
「わざと卑下して話の腰を折るのは卑怯だよ、ウエンディ」
待ちくたびれたのはお互い様じゃないか、レビニ。
もうすぐ衣装換えの時間だよ。胸ポケットの待ち針を忘れないように。お手製だろ、それ。
「泣きっ面に蜂ってこのことだね、ウエンディ。眠いのは気のせいだよ、ウエンディ」
毎晩、あの錆びた鉄の柵から落ちていく自分の後姿が見えるんだ、レビニ。凄く心地がいいんだ。
でも、何事も無く着地するんだ。願っても無かったよ、レビニ。
「憂鬱だって、楽しいじゃないか。ただ、他の人を巻き込むのはいただけないよ、ウエンディ」
巻き込まれたら勝ちだよ、巻き込んでも、勝ちだよ、レビニ。
レビニは、トウモロコシをかじる。わたしは、ほうきで砂を掃く。レビニがからかう。ウエンディ、君の結った後ろ髪、その使い込んだほうきの藁と、同じ向きに流れてるよ。
暗転。マッチを擦る音。拭い去れないまま火も消える。