図書館にブコウスキービリー・バンバントム・ウェイツタジ・マハール返しにいかな、と。二、三ヶ月借りっぱなしで、催促のハガキ来てやっと返す、って言うのを繰り返してたら、もう貸し出しせえへんよって脅されたりするから、気をつけな。
さて。返して、午後七時。飯まで一、二時間ある。夕方にうろつくー、意味も無くうろつくー。今日はチャリやからいつもの三倍うろつける。いつもどおり地元付近の知らん道を行く。ウォークマン電池切れてもうたから、うつろうままの思考がとめどないので、ダラダラ月ばっかり見る。なんやったかな、古典の授業で、山月記やったかな、空ばっかり見てんのは発狂する前触れとか。チバユウスケ、歌詞聴いてたら今も昔も月ばっかり見とんねんけど、ああ、ぜんぜん納得し得る、気狂いニイチャンやしな。もうオッチャンなってもうたけど。The Birthday、子供も生まれたみたいやし。ミーハーや。
おっ、おお、ここは、前のじいちゃんばあちゃん家の近くや。五年前ぐらいに引っ越して、今はオレん家の向かいのマンションに住んでる。うわ、うっわ、懐かし、おお、そうそう、よう遊んだは弟と、この変な楕円形の滑り台。すげえな、滑り台の上に上って、ホープに火ィ点けて、下見たら、十年間きっと思い出したこと無い、その時の雰囲気とか、弟上まで上がられへんで、オレだけ上がれて見下ろして威張りくさってたこととか、知らん女の子と遊んだ、子供ながらに異性との交友でうれしかった、淡い気持ちとか思い出した。記憶ってのは忘れないんだよ、思い出せないだけ、ってなんかのゲームのキャラかなんかが言うてたセリフやねんけど、ベタに納得。
そんままさらにうろうろしてたら、前のじいちゃんばあちゃん家跡地を見つけた、多分。隣の家のおっちゃんが出てきたから、聞いてみる。
この隣、前、村上さん言う人の家建ってましたよね?
「そうやなあ、村上さん言う人が住んでた時もあったかなあ。ところであなたは?」
あ、孫です、その村上さんの。このへんうろうろしてて、懐かしいなって思って寄ってみて。
「はあ、お孫さん。うーん、住んでたと思うよ」
そうすか、あ、ありがとうございました。
「ごめんなあ。はあい、さようなら」

なんかちょっと気の毒な顔してはった。あれかな、好きやったじいちゃんばあちゃん何年か前に亡くした孫が、少し大きくなって、懐かしんで、訪ねて来た、みたいなん思ったんかな。別にバリバリじいちゃんばあちゃん生きてるんですけど。
とか、思いながら、道に出たとき、ぼろぼろ涙出てきた。ちょっと落ち着こうと思って、公園のベンチに座り込んでタバコに火ぃ点けて。でっかくて暖けえなあって思った。こっちの方はなんちゅう冷たぁてちっさいんやろうって。
一本吸ったら落ち着いたから、奮い立たせて、だるうい、うざあい現実にさっさと帰ろうと決める。立ち向かう気はさらさら無いけど。