コオロギ

金で縁取られた白一色の部屋に
曲がったナイフと溶けたレコードと赤いハンカチとコオロギの死骸と黄ばんだ便器があって
とても心地よく感じた僕は千切れるくらいマスターベーションをして
曲がったナイフを口にくわえて溶けたレコードを指で回して赤いハンカチで汚れた床を拭いてコオロギの死骸を右目と入れ替えて黄ばんだ便器に腰掛けて
また心地よく感じた僕はまた千切れるくらいマスターベーションをして
そこに29年前以来の来客者が現れて垂れた赤毛から覗く青色の眼で僕を見上げながらこう言うんだ
「恥ずかしくないの?」