水中、それは苦しい

あきらめが介在している、粘ついたあきらめじゃない、趣味の良いあきらめだ。
出会い方が違えば、あんたらもこうだったのかも知れない、あの人もそうだったのかも知れない。

頭の中で、日曜日よりの使者がタイミングよく流れる。ハイロウズね、ベタベタや。思わず歌いだしそうになった。あんたらには助けてもらってばかりだ、また誰も覚えていないような失敗を、その失敗から学ぶこと無く悔やむだけのオイラを引きずる帰り道から、ひっぱり上げてくれる。あんたらにとっては、気にも止めていないし名前すらわからない小さな虫を、踏まなくて、その虫が勝手に感謝を送っている、虫がどれだけ感謝をしていても、わかりゃしないし。そんな感じだろうけども。

お前ら、一人で生きるのは楽なんだぜ、生れつき海の中へ深く潜って息の続く方だったからさ、水中じゃないと、しかも、ある程度塩分が無いとうまく息が出来無くてさ。広さの無い、空と交じる線まで届かないくらいの狭い海、もうかなりのとこまで潜ってみたけど、底は見えない。それはうれしいことだけど、このまま潜っていったって、二度とキスなんて出来ないかも知れない、なんて、頭をよぎっても、それぐらいしか能が無い気がする。
そんなオイラが、たまに海面へ出てみると、色んな人や物事が、オイラに様々な罵声を浴びせかける。キモイとかさ。そんなにかなあ、ああ、まあ、ふやけてるしなあ、ここにい過ぎやからなあ、一番楽やからさ。

そこに、オイラのツムジすれすれを飛行機が通る。実体の無い罵声も一瞬聞こえなくなる。でかくて、うるさくて、眩しい、そんなスカイ・フィッシュになる運命。じゃあないけど、そこだけくり抜く。
実は器用なんだぜ。